Overture 〜Seth〜

 いつも夢に見る。
 真っ赤な炎の中、天より降り立つ“白き龍”の姿を。
 それは恐怖と恥辱、畏怖と憧憬、そして尽きぬ悲しみを呼び覚ます記憶。
 俺はあの日のことを忘れないだろう。決して。

「さて、どうするね? セト。」

 俺は黙って下を向いた。

 ここは村長宅の居間だ。
 引っ越しを終えたばかりだが、部屋は綺麗に片付けられている。
 内装は、かつての村長の家とほぼ変わりない。
 俺達の村が滅んだことを伺わせるものなど、ここにはない。

 どちらにしろ、しなければならないことは分かっている。
 孤児だからといって、村長一家が俺を養う義務などどこにもない。
 いつまでも厄介になっているわけにはいかない。
 彼らも、俺と同様に被害者なのだ。
 今、こうして面倒を見てもらっているのも、数少ない生き残りに対する同情と感傷に過ぎない。

「幸いここは首都テーベだ。村に比べたら、働き口はいくらでもある。」

 村長の言を受けて次男が続ける。

「だが、セト。
 君は本当に優秀な生徒だった。
 僕は君がこのまま市井の生活に埋もれてしまうのが、惜しくてたまらないんだ。」

 彼のことを俺達は先生と呼んでいた。村で学校を開いていたのだ。

「それを言うなら、セトは軍隊に入るべきだ。
 こいつの武術の腕は並ではないんだぞ。
 本人も、幼い頃からそれを望んでいたじゃないか。」

 この台詞は村長の長男。彼は道場を開いていたので、俺達生徒は師匠と呼んでいた。

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