Overture 〜Seth〜

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 俺は優れた戦士になりたい。幼い頃からの夢だ。
 いや、決定事項といっても良い。

 俺は父の顔を知らない。
 俺が小さい頃、ファラオを守るために戦場で亡くなったのだという。
 戦士としてもっとも誉れの高い死を選んだ父は、俺と母の誇りだ。

 父の話をする母は、いつだってとても美しかった。
 ふとよぎる寂しそうな顔さえも、母の美しさを際だたせる。

 母の口癖はこうだ。

「お前のお父様は、ファラオをお守りするために戦場でお亡くなりになったのよ。
 とても勇敢な戦士だった。」

 そして母は遠いどこかを見つめる。
 父が居る冥府か? それとも過去の思い出か。

 あの頃の俺はまだ小さすぎて、母の思いなど知る(よし)もなかった。
 そんな俺の言葉を、母はどんな思いで聞いていたのだろう。

「ねえ、ははうえ。
 僕のちちうえは、一番すごいんだよね!」

「そうよ。
 戦士として最も名誉な戦死を遂げられたの。
 誰にでも出来る事ではないわ。」

 そこで必ず母は微笑むのだ。
 俺はその笑顔が嬉しくて必ずこう言った。

「だいじょうぶだよ。
 僕はきっとちちうえのようになる。
 必ずははうえを守ってあげるからね。」

「ありがとう、セト。
 お前ならきっと、人々の役に立つ人物になれるわ。
 だって、お父様の血を引いているのだもの。」

 俺は母に喜んで欲しかった。
 いつも笑顔でいてほしかった。
 母の望む人間になりたかった。
 俺の力で守りたかった。
 なんとしても力を付けたかった。
 なんとしても。

 だから俺は、村に一つしかない道場と学校に足繁く通った。

 有事の際、母を守る為に武術をマスターした。

 知識は何かを決断するときの拠り所になる。
 だから沢山の石版を読み、読み書き・算術など教われるものは全て教わった。

 だが、結局残ったのはこの身一つだ。
 なんという皮肉だろう。
 結局俺は、母を守れなかった。
 あとは立派な戦士になって、両親の思いに報いるしかないではないか。

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